寄植えをするケイ山田

英国園芸研究家のケイ山田による、寄植え作りの考え方や、実際の作り方のポイント、メンテナンスの解説です。寄植えの基本を楽しく理解しましょう。

「寄植え」とは

寄植えをするケイ山田

寄植えとは、ひとつの土に複数の植物を植えることです。ひとつの鉢で複数の植物が楽しめ、個性を出した鉢が作れる反面、複数の植物の育ち方や適する土や肥料を把握しておかなくてはならないなど技量や知識が試される植え方でもあります。

寄植え作りの考え方

寄植えをするケイ山田

寄植えのコンテナガーデンを作る前に、まず最初に考えなければならないのは、「その寄植えをどこに置くのか」ということです。室内でしょうか、それとも屋外でしょうか。室内ならカーテンや床の色、屋外なら壁の色や周りの環境を良く見てください。屋外でも玄関前と庭の中とでは、日当たりや風の当たり具合など、植物が生育する環境も当然、異なりますね。このように置き場所を考え、それに合った鉢や植物を選ぶことが寄植え作りの第1歩です。自分の好きな花を植え込んでしまってから、「あとはこれに何合わせようかしら?」と考えたり、寄植えがすっかり出来上がってしまってから「どこに置こうかしら?」と考えるのは、全く順序が逆なのです。第一、土も植物も何もかもが入ってしまった大きなコンテナや鉢を動かすことは、困難な場合が少なくない、と覚えておいてくださいね。

寄植え作りに必要な材料

それでは、寄植え作りに必要な材料を揃えて行きましょう。コンテナや鉢、土、植物の選び方を解説します。

コンテナ・鉢の選び方

寄植えに最適な鉢

まず、寄植えの土台となるコンテナや鉢の選び方です。あなたがこれから作る寄植えは、どこに飾ろうとしているものですか?例えば玄関前ならば、小さなコンテナをたくさん置くよりも、大きなコンテナを2つか3つ、置くことをおすすめします。大きいコンテナがいくつかあると、それが1つの風景として成り立ちますし、家の風格もグンと上がります。その際、コンテナは植物との相性だけでなく、家の壁や地面の色とのバランスも大切です。

また、マンションのベランダなどに置く場合に一番気をつけたいのは、重量の問題。テラコッタでは重すぎて持ち運べなかったり、1つ2つと増やしていくうちに重量オーバーになってしまった!いうこともありますから、そのような場合は軽量なものが良いですね。最近は、一見するとテラコッタかと思うような優れたデザインのプラスチック製やグラスファイバー製など、デザインや機能性に富んだ鉢がたくさん出ています。置く場所に合わせて最適なコンテナや鉢を選ぶことが、美しい寄植え作りのポイントの1つです。

そしてもう1つ、心に留めておいてほしいことがあります。ぜひ、10年、20年、一生使うつもりでコンテナや鉢を選んで欲しいのです。優れた鉢は植物の魅力をいっそう引き立たせてくれますし、年数を重ねるごとに鉢自体にもいい味が出てきます。素敵な鉢を選んで、存分に寄植えを楽しんでください。

土の選び方

寄植えに最適な土

寄植えで、最も大切なものの1つが土です。庭でよく育つからといって、その土をそのまま鉢に入れても植物はうまく育ちません。というのも、庭では植物の根は自分の好きな環境を求めてある程度自由に動くことができます。しかし、鉢植えでは空間が限られていますから、植物に必要な酸素や栄養素が限定されてしまうのです。それに、鉢では水はけと水持ちを両立させた優秀な土が必要です。市販の培養土で構いません。

ここで大事なことは、植えようとしている植物が酸性の土を好むのか、それともアルカリ性を好むのか、ということです。酸性、アルカリ性の大まかな見分け方は、その植物の自生地にヒントがあります。日本の土は弱酸性なので、自生するツツジやシャクナゲ、山野草などは弱酸性を好みます。一方、ハーブ類や輸入植物は、ややアルカリ性を好むことが多いのですが、ブルーベリーなど酸性を好む輸入植物もありますから、一度調べてみると良いでしょう。土の好みが異なる植物同士を一緒に植えると、どちらかがダメになってしまいますから注意しましょう。

植物の選び方

寄植えに使う植物の選び方 1
寄植えに使う植物の選び方 2

植物選びの3つのコツがあります。

植物を深く知り、持ち味を生かしましょう

コンテナづくりの成功の秘訣は、植物の持ち味を生かすことです。持ち味を生かすには、素材を深く知らなければなりません。さて、植物の持ち味とは何でしょう。それは見かけだけに留まらず、その植物が持っている特性や習性のことです。つるで伸びるのか、茎が直立して伸びるのか、それとも這っていくのか、根はどのように張るのか、日光が好きなのか、雨が苦手なのか・・・。植えたばかりの時は良くても、成長したら背が高すぎてバランスが悪いとか、逆に低すぎて他の花の間に埋もれてしまったという残念な結末は、植物のことをよく知らないために起こる失敗です。植物の特性をよく理解し、それを生かす方法探りましょう。そうすれば、植物は私たちの想像を超えた素晴らしい姿を見せてくれることもあるのです。

長く楽しめる植物を選びましょう

時間の経過とともに少しずつ表情を変えながら美しくなっていく。これが寄植えの魅力であり醍醐味です。植えた時はもちろん、時間が経過してからの姿を楽しむためには、花や葉の美しさが長持ちする植物をいくつか一緒に植え込むことをおすすめします。 例えば、チューリップやスイセンなどの春の球根花は2~3週間で咲き終わってしまいますが、一緒に花期の長いパンジーや常緑のクリスマスローズなどを植えておけば、球根の花が終わってからも楽しめます。

枠にはまらず、エンターテインメント性を

「寄植えに向いている植物」というのは実はないのです。反対に言えばどんな植物でも鉢に植えることができるということです。例えば、トマトやジャガイモ、キャベツなどの野菜も寄植えの面白い素材です。野菜の花は素朴で愛らしいものが多いし、収穫して味わうという楽しみも待っています。鉢の中からジャガイモがぞろぞろ出てくるなんて、まさにエンターテインメント。もちろん、ちょっとした工夫や丁寧な手入れが必要になることもありますが、そうした手間こそが、ガーデニングというものです。

寄植え作りの基本

植物を植え込むときに心がけてほしいことは「ぎっしり」植えるということ。と言うと、「植物同士をそんなに近づけて大丈夫?」と思われるかもしれませんが、全く心配ありません。 むしろ、ぎっしり混んだ状態の中で、互いに切磋琢磨して育った植物がつくり出す造形こそが面白いのです。たとえその中で生き残れない植物が出てきたとしても、一時的ではあっても足元をカバーしたり、鉢の中でちゃんと役目を果たしているのですよ。

苗と鉢のバランスを見る

寄植えの基本1 苗と鉢のバランスを見る

玄関前を飾るのに、口径25×高さ20cmのリリーポットを用意しました。高さのある鉢なので、背丈の高い植物を植えても十分釣り合いそうです。草丈20~30cmほどのストックやアネモネなど、計8ポットの苗を植えることにします。最初に、根張りの良い元気な苗を選ぶことが重要なポイントです。

土を入れる

寄植えの基本2 土を入れる

コンテナを長く楽しむためには良い土を使いましょう。市販の培養土で構いません。良質の土を使うと、バラや樹木などを植えこんでも、その後、植え替えの回数も少なくて済み、管理が楽です。土を鉢の3分の2程度入れたら、その上に苗をポットごと置いてみてバランスをよく確認します。

表土の高さを揃える

寄植えの基本3 表土の高さを揃える

それぞれの苗の表土の高さが一定になるように調整します。水やりのスペースを鉢の縁から2~3cmほどあけますので、その位置に苗の表土が揃うように、鉢に入れた土の高さを微調整してください。植え込む順番は、丸い鉢なら中央から。最初にメインとなる植物や背の高い植物を配置し、その周りに残りの植物を植え込みます。枝垂れるような植物は、鉢の縁側に。

根を挟んでつぶす

寄植えの基本4 根を挟んでつぶす

いよいよ苗を植え込みますが、25cm口径の鉢に8個もの苗が入るものか、不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。実は、ここが最大のポイントです。苗の土の部分を手で挟んで、根を傷めないようにつぶしましょう。英国から来たガーデナーは皆こうして植え込んでいるのですが、これは根を圧縮することで、根張りがかえって良くなるからなのです。根がポット内で回っていたら、少しほぐしてから行いましょう。

苗の間に土を入れる

寄植えの基本5 苗の間に土を入れる

苗と苗の間に土を入れ込み、水やりをすれば完成。その後は液体肥料を10日に1度程度やると花が長持ちします。

寄植えのメンテナンス

寄植えを美しく保つためには手入れが必須です。日々の水や花がら摘みに加え、定期的な切り戻しや花後の植物をケアすることによっていつまでも長期間美しく寄植えを保つことができます。

水やり

寄植えのメンテナンス1 水やり

基本的に、コンテナの土の表面が乾いたら、鉢底から水が染み出してくるくらいたっぷり水を与えます。その際、花や葉にかからないよう、なるべく根元にだけ水をやるようにしましょう。水がかかると、薄い花びらは色が抜けてしまうことがあります。

早朝の水やりが理想的ですが、夏の暑い日には夕方、もしくは夜にあげても良いでしょう。朝日が昇り、気温が上昇していくときに水やりをすると、温水になって蒸れたり、葉焼け(葉が黄色や茶色に変色し、ひどいと枯れる)の原因になることがあります。葉が黄色くなって落ちたりするのは、多くの場合、葉焼けか水のやり過ぎが原因です。

室内に置いているものも、観葉植物以外で移動できるものは一度屋外へ出して水やりをし、水が切れてから室内に戻し、鉢皿の上に置いておきます。外に出すというのは、水やりの便宜的な都合もあるのですが、植物にとって外の風に当たったり太陽の光を浴びることは大切な事です。風は植物の病気を治療したり、紫外線は花や葉の色を良くする効果があるのです。ただし観葉植物は鉢皿で受けられる程度の水やりで十分です。

一方、植物によっては水を嫌うものもいます。例えば、ランの中には空気中の水分だけで十分なものもいますし、霧吹きで水やりをしたほうが良いものなどもいます。植物によって水の必要量が違いますので、それぞれの性質をよく知ることが水やりにおいても大切です。

花がら摘み

寄植えのメンテナンス2 花がら摘み

枯れた花や葉っぱは、こまめに摘み取ってください。これはコンテナの美観を損なわないためでもありますが、コンテナ内の風通しを良くし、病虫害を防ぐためでもあります。また、枯れた花をそのままにしておくと、タネができて株が弱る原因にもなります。枯れてしまう前に摘み取って室内に飾れば、花がら摘みも楽しくなるのではないでしょうか。パンジーやビオラは10輪もあれば、小さくても愛らしいブーケができますよ。

切り戻し

寄植えのメンテナンス3 切り戻し

夏の酷暑などによって、これまで盛大に咲いていた花の勢いが一時的に弱まることがあります。そうしたときには、一度花首を短く刈り込んだり切ったりすると、再び秋になって素晴らしい花を咲かせてくれるものがあります。
例:アリッサム、インパチェンス、ペチュニア、ダリア、サルビア、マリーゴールド

花後の植物

寄植えのメンテナンス4 花後の植物

シーズンが終わった植物は、コンテナから抜き取ります。抜いた箇所には他の植物を新たに植えて引き続き楽しむことができます。宿根草や球根は掘り上げて再利用できるものもあります。宿根草は伸びすぎた茎などを切り戻し、別の鉢やポットなどに植えておきます。

最後に

蓼科バラクラスクール生募集

より寄植えについて知識を深めたい方のためのガーデニングスクールも行なっておりますので、ご参加いただければと思います。同じ趣味を持った仲間がたくさんできますよ。そして、上達してきたら寄植えの芸術展に出展してみましょう。日頃の学習の成果を発表する場です。実績を積めば自分の教室も開講できるようになります。

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